文化財からみえてくる

 「天然記念物」と同様、失われてしまいそうだからこそ、「文化財」として意識的に、行政や地域も含めたみんなで守っていく必要のある、大切な 遺物の数々。

 もちろん三宅島にもあり、壬生家当主や神社宮司が所有・管理しているものも 多くあります。東京都や三宅村での 指定となっているものの、三宅村(教育委員会)には学芸員としての採用枠がなく、文化財担当者(社会教育係)も数年交代です。人口の少ない村では、文化財保護審議会も、専門家や文化財に特に造詣の深い方ばかりによる運営というわけにはいかないのが、現状だと思います。東京都教育庁三宅出張所にも 専門家は駐在しておらず、本庁の学芸員さんがごくたまに来島されたり、遠隔で相談をさせてもらったりしている状況です。

 一昨年頃から「三宅島役所跡」の保存活動を志すようになりましたが、個人所有の文化財については、その修復や活用などにあたり  所有者本人の意志 に任される部分が多く、村や都からの助言も 多くはなされない様子だと感じ、現状では文化財とその価値を後世へ伝えてゆけるのか、不安を抱いています。所有者側に 知識や意識がそれほど深くない場合や、年齢構成や傷病や障害など 様々な家の事情によって 主体的な判断が難しくなった場合など、維持修復が手遅れになることも あり得るのではないでしょうか。特に高齢化社会のなかで、所有者が高齢者となる場合も多くなります。具体的な傷病がなくとも、本人だけでは困難な作業や判断があると思われますが、公共機関の文化財担当者が 高齢者の支援を十分に行うのは 難しいと思います。福祉や消防などへもつなげ '地域ぐるみ'で 文化財を伝えていく 必要が あるのかもしれません。

 

文化財は、たくさんのことを私たちに伝えてくれます。その価値を、もっと学び発信していくことで、「周囲から」保存活用を支えていこうと 試みています。現在、そのような立場で 声をあげるしかありません…今何もしなければ 忘れられてしまう、大変に貴重なものが、ここにはあります。

それらを、なんとしても、目の前で絶やしてはならない!と誓いつつ…

学校や地域での学習へ、活かす

島のことを深く知るため、あるいは身近なことから世界を知るために、実際に 見たり聞いたり触れたりすることのできる象徴的な教材として、「文化財」をもっと活かしていけるのではないか と考えています。

「三宅島の先人が、こんなに貴重なものをつくり、育み、守ってきたんだ!」ということが、誇りへと繋がります。他の地域との関連から視野を広げたり、教科の学習に興味を持つきっかけにもなるでしょう。島では多くのひとが、中学校または卒業後には進学や就職で島を一旦離れることが多いことから、特に小・中学生の子どもたちに 体験してもらいたいと思い、提案をしています。

 

アカコッコなどの天然記念物については、既に保護活動や教育への導入が盛んです(島内外たくさんの努力が素晴らしい!)。既に、流人関係の旧跡などにまつわる学習が学校で行われたり、木遣り太鼓などの無形文化財が郷土芸能保存会によって広められたり、島内・外を繋げるような教育活動がなされています。縄文・弥生の遺跡も、関心をもたれてきました。

 

三宅島には 他にもたくさんの文化財があり、教材化を進められると思います。

特に、古代~中世に繋がる遺物に 離島ならでは遺されてきたものがみられる点を、活かしたいものです。島に古から伝わる文化は 自然と深く関わっており、天然記念物を多く含んだ自然保護へも貢献するのではないかと、気づかされます。

 

主に、「かやぶきっず@みやけじま」やアートの活動で実践しています。

三宅島役所跡の保存活用にむけて

筑波大学の先生方や 日本茅葺き文化協会の専門家による、三宅島の茅に関するプロジェクト に参加させていただいています。

 

三宅島の茅や茅葺に関する 自然・文化両面からの調査研究と、子どもを含めた多くの方にそれらを知って親しんでもらい、伝承していくことを目指します。2020年に「茅採取」「茅葺」がユネスコ無形文化遺産に登録され、茅の循環的な利用がSDGsに貢献すると考えられる点も含め、広く知られるようになってきました。茅葺き研究の第一人者である安藤邦廣先生も来島されて、噴火の跡へハチジョウススキが繁茂してくる様子や 茅・竹の利用をみられ「三宅島は茅の聖地だ」と、特異性を見出されました。自然環境の保全にとっても 大切と考えられる「茅」や「茅葺き」とともに歩む地域のあり方を、三宅島から 発信して行けるかもしれません。

かつての 自然と近しい暮らしの知恵は、これからの地球や人の心身を健やかに保つために 忘れてはならない 記憶だと思います。「三宅島役所跡」は、そのような記憶を伝えてくれる 存在です。伊豆諸島でも 稀少な茅葺き屋根をもったこの文化財の存在を、より有意義に 保存活用し 次世代へ伝えてゆくことへ、取り組んでいます。三宅島の小中学校の授業でも「茅についての学習」を取り入れてもらえるようになりました。

 

東京都教育庁三宅出張所のご担当者とは もちろんのこと、本庁の学芸員さんにも 随時質問などをしたり 公共機関に相談をしたりと(次世代以降を担う可能性を視野にいれて、所有者の家族の立場から質問などをさせていただいてきました)、将来あるいは 現在 住居として使っている中でも 困ったことが起きないようにと、対策を考えています。

 

→キッズページ「かやぶきっず@みやけじま」で、「三宅島の茅」についての取り組みや情報を発信しています!


神事芸能の保存にむけて

東京都無形民俗文化財「御笏神社の神事」「御祭神社の神事」が、2000年噴火以降、行うことが困難となっていますが、なんとか復活や記録を しなくてはならないと、動いています。実際に 映像から舞を学んで再現したり、國學院大學などの研究者の先生方や、東京都教育庁の学芸員さんなどに 相談したり しています。